福島の人たちの誇りと希望を込めて 「福島プロジェクションマッピング2016 はるか 〜 白河 花かがり 〜」

福島プロジェクションマッピング はるか2016
4月15日と16日、福島県白河市で行われたプロジェクションマッピングのイベントは、「工事中の建物に映像を投影する」という試みでした。工事現場ならではの悪条件を逆手にとってどんな表現をしたのか? クリエイティブ・ディレクターを務めた山田プロデューサーが語ります。


2013年から3年間にわたって行われてきた「鶴ヶ城プロジェクションマッピング はるか」。会津若松市のシンボルともいえる鶴ヶ城をスクリーンに見立てて映像を映し出すこのイベントを、これまで延べ8万人にお楽しみいただきました。私たちNEPはこの福島の復興を少しでも応援したいと、開始当初から企画制作を担当してきました。

鶴ヶ城プロジェクションマッピング2015 はるか

『鶴ヶ城プロジェクションマッピング2015 はるか ~あかべこものがたり~』より(2015年3月 福島県会津若松市で開催)

震災から5年。主催のfukushimaさくらプロジェクトは、3年間続いた会津を離れ、今後は順次福島全域で開催し、福島の復興を応援し続けていこうと考えています。その第一弾として4月の15、16日に白河市で開催されたのが「福島プロジェクションマッピング2016 はるか ~ 白河 花かがり ~」です。
会場は今年の秋に竣工予定の文化交流館「コミネス」。白河市民の皆さんにとって文化的交流のシンボルになる建物です。未だ復興半ばの福島、そして建築途上の建物。ふたつのイメージが重なり、様々な候補地の中からここで計画を進めることが決まりました。

映像のストーリーは、福島の人々が持つ誇りや、苦難に負けず将来への希望を描きだす強さを、桜の成長になぞらえて描きました。「花かがり」というタイトルには、夜桜を浮かび上がらせるかがり火、プロジェクションマッピングで輝かせる復興の光という意味を込めています。
全体は3部構成、計20分ほどのコンテンツです。
入場時には福島県で愛されている民謡「相馬盆唄」を、今年で3回目の参加となる大友良英さんとSachiko Mさんによる大胆なアレンジでお届けし、地元の名産・白河だるまの可愛らしいアニメーションが観客を迎えます。
そして第2部。静寂を打ち破るのは、建設中の建物(コミネス)の中から聞こえてくる太鼓の掛け合い。太鼓の演奏は地元の「大信(たいしん)こだま太鼓」が行い、照明や映像と組み合わせた迫力のパフォーマンスを披露しました。
最後の第3部は、桜の成長と福島の人々の生き様を描くプロジェクションマッピングです。“しっかりと根を張った桜はどんな試練にも堪え、美しい花を咲かせる“という力強いメッセージを込めて、紫舟さんの書と大友さんSachiko Mさんの音楽、橋本大佑さんの映像でお届けしました。

第1部 白河だるまのコミカルなアニメーションで来場者を迎える

第1部 白河だるまのコミカルなアニメーションで来場者を迎える

第2部 観覧エリアや奥の建物の中でパフォーマンスする大信こだま太鼓

第2部 観覧エリアや奥の建物の中でパフォーマンスする大信こだま太鼓

第3部 桜が芽吹き、やがて試練を乗り越えて美しい花を咲かせる

第3部 桜が芽吹き、やがて試練を乗り越えて美しい花を咲かせる

建築中の建物にプロジェクションマッピングをするというのはこれまで類のない試みかと思います。通常のプロジェクションマッピングでは、映す建物の正確な図面をもとに、映像を制作していきます。ところが今回は勝手が違います。映像を映す建物はまさに建設中。周囲は足場で囲まれ、状況が刻一刻と変化するため、正確な図面を作る事ができません。とはいえ何か基準がないと映像が作れないので、工事現場の方たちと打ち合わせを重ね、イベント当日の現場のイメージを、想像も交えて固めてみます。当然想定外の事が多々起こるのですが、そこが大変でもあり楽しいところで、臨機応変に対応していかなければなりません。映像はある程度想定で制作し、現場で調整できるようなファジーなところを盛り込みながら計画していきました。
工事中の建物だからこそ面白かったこともあります。工事の足場には破片や粉塵などの飛散防止ネットが張られていて、映像を投影するとネットを透過して奥の建設中の建物にも映ります。そのため、思いのほか立体的な表現になるのです。また足場の中に照明を仕込むと、舞台などで良く行われる紗幕を使ったような効果になり、内側の建築物がライトアップにより浮かび上がる表現が出来ます。そのため、今回は随所にその特異性を生かした演出を心がけました。

飛散防止ネットを通して映像の背後に建設中の建物が浮き上がる

飛散防止ネットを通して映像の背後に建設中の建物が浮き上がる

地元の方たちと一緒にイベントを作り上げていく過程が、私たちにはとても貴重な体験となりました。太鼓奏者の方たちには広い客席内に20メートルほど離れたステージ4か所と、コミネスの内部に1か所の計5か所で演奏してもらいました。映像と同じように立体的な音を体感してもらおうと考えたのです。このような状況での演奏は当然はじめてです。最初はタイミングがなかなか合いませんでしたが、何度も挑戦していただいた結果、一糸乱れぬ演奏になりました。最後まで“やりきった“という満足感を浮かべた一人ひとりの顔がとても印象的でした。
こういったイベントは地元の方たちのご協力なくしては成し得ません。結果、一回の上映で2,000人、2日間で1万3,000人もの人に観ていただく事が出来ました。

開場を待つ人の行列は白河駅近くまで及んだ

開場を待つ人の行列は白河駅近くまで及んだ

筆者(会場で撮影)

筆者(会場で撮影)

“はるか”は福島全域に今後根付いていってほしいイベントの一つです。
私たちは、今後も被災地を応援するプロジェクトに力を尽くしていきたいと思います。
末筆ですが、熊本地震により犠牲になった方々に心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様方にお見舞い申し上げます。

(グローバル事業本部 イベント・映像展開 エグゼクティブ・プロデューサー 山田崇臣)


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