二夜連続の生放送で、スタジオに集まったくせ者論客が事件の謎を読み解く『謎解きLIVE』。切れ者ゲストの推理の裏をかき、Twitterで猛烈に情報交換する視聴者をいかに裏切るか? 頭をひねって引っ掛けを仕込むプロデューサーの苦悩の心境を、神部プロデューサーが語ります。
「ミステリーを愛してやまない諸君に送る極上の2日間」と銘打って始まった『謎解きLIVE』。2013年の『英国式ウイークエンド殺人事件』、2014年の『忍びの里殺人事件』に続く第3弾『美白島殺人事件』が間もなく放送です。
この番組は人気ミステリー作家によるオリジナルストーリーをドラマ化し、スタジオに集まったくせ者論客たちが想像力豊かに謎を読み解いていくという二夜連続の生放送。視聴者のみなさんもデータ放送を使って推理に参加できる、新しいスタイルのミステリー番組です。
今回の 舞台は「離島」。通称“美白島(びはくじま)”です。島の特産の果実に美白効果があり、それに注目したとある化粧品会社が新製品のポスター撮影に訪れます。なにやら因縁ありげな人々が集まり、事件が起こります。原作は『殺戮にいたる病』などシリアスな作品から、速水三兄妹シリーズなどコミカルなものまで幅広い作風で知られる我孫子武丸さん。大いに楽しみにしてください。
これ以上は放送を見ていただきたいのですが、ここでは『謎解きLIVE』というミステリー番組を制作する上での苦労話を。
みなさんは「ノックスの十戒」をご存知ですか? ミステリー作家による作品作りの基本的ルールで、「犯人は物語の早い段階で登場していなくてはならない」とか「探偵が超能力で事件を解決するのは無し」など、ミステリーをミステリーたらしめる条件が記されています。なかでも重要なのが「探偵は読者に提示されていない手がかりを使って謎を解いてはいけない」というものです。
『謎解きLIVE』も基本的にこれにのっとっているのですが、実はこれが簡単ではない。まず、犯人逮捕に結びつく手がかりだけを提示したのでは目が肥えた視聴者はすぐに見抜きます。かといってその場限りの怪しい手がかりを示してもダメで、全編通してつじつまがあってないとこれまたバレバレです。
さらに悪いことに『謎解きLIVE』はスタジオにとても頭の切れるゲストをお呼びするので、よほど巧妙に仕込まないと大変まずいことになります。180分もある番組で、事件直後に犯人がわかってしまったら一体どうすればいいのでしょう? 今回のゲストは過去2回高得点をたたき出している俳優・ミュージシャンのマキタスポーツさん。原作の我孫子さんの作品を読み込んで傾向を分析しまくっているという異色のファッションモデル、市川紗椰さん。数々の推理ゲームでヒットを飛ばし、我孫子さんの癖も知り抜いているゲームクリエイターのイシイジロウさん。一体誰がこんな手ごわいゲストを選んだのでしょうか? 考えただけでも冷や汗が出ます。
さらにさらに悪いことに、二夜連続の生放送です。一夜目の放送途中からTwitterをはじめSNS上では犯人推理の情報交換が猛烈な勢いで始まります。下手な引っ掛けなどあっという間に見破られてしまうでしょう。一体誰がこのような企画を立てたのでしょうか? SNSなんかなければいいのに、と多くのミステリー作家が思っているのではないでしょうか。
しかし、今回の物語には自信があります。素晴らしい物語を楽しんでもらうため、スタッフ一同頭を絞って引っ掛けを考え抜きました。あ、引っ掛けのことをミステリー業界では『赤いニシン』と言います。どうぞ、飛びついてください。
謎解きLIVE 美白島殺人事件
7月18日(土) 午後9時から(90分)
7月19日(日) 午後10時50分から(90分)
NHK BSプレミアムで放送予定
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